オニテナガエビ養殖を研究する

オニテナガエビ(Macrobrachium rogenbergii)の養殖研究のため、基礎データや過去の研究文献、メディア情報などを収集、整理するブログ

オニテナガエビ基本情報

今日はオニテナガエビの基本生態について調べたのでまとめておく。今後は論文を漁って飼育条件や餌、難易度、課題点なども調べてまとめていき、研究テーマの参考とする予定。

 

 

オニテナガエビ

Giant river prawn

Macrobrachium rogenbergii(Deman)

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生息地:インド〜東南アジア〜オーストラリア

別名

  • Malaysian prawn / Freshwater scampi (インド)
  • Cherabin (オーストラリア)
  • Golda Chingri (バングラデシュ)
  • Udang galah (インドネシア、マレーシア)
  • Uwang / Ulang (フィリピン)
  • Koong mae nam / Koong ghram gram (タイ)

 

 

生態について

体長30cmになる世界最大の淡水エビの一種。世界中で養殖されている。プランクトン期には汽水を必要とする。その後は完全淡水で生育可能。メスは年5回抱卵可能で、卵は3週間未満で孵化する。卵の数は10000~50000ほど。幼生は32~35日で7.1mm~9.9mmの幼体となり、淡水に戻る。(Forrest , 2000, "Grow-out culture of freshwater prawns in Kentucky")

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オニテナガエビの主要生産国(FAO Fishery Statistics, 2006)

 

オスの第二鉗脚は社会的地位により、色が変わる。オスは3タイプのモルフォタイプが存在し、Small Male(SM) / Orange Claws(OC) / Blue Claw(BC) の3つである。

SM(Small male)は成長段階の最初の段階で、透明の短い鉗脚をもつ。メスにしばしば間違えられるが、繁殖可能であり、BCによって保護されたメスに忍び寄り、交尾する。(昔大学の講義で、魚類のマスのオスには2タイプがあり、強いオスと弱く小さいオスが存在する。強いオスは交尾相手を力によって得るが、弱い小さなオスは隙をみてオスに守られたメスに近づき、受精を行うというのがあった。弱いオスなりの生き残り戦略はエビにも存在するらしい。)

OC(Orange Claws)はSMの次の成長段階で、体長の0.8~1.4倍の第二鉗脚を有し、ハサミ部分はオレンジ色となる。メスに対して攻撃的であり、あまり交尾をしない。自慢のハサミをハデハデな色にしてメスに攻撃的、その割に交尾できないところはまさにエビの厨二病時代といったところか。

BC(Blue Claw)は最終形態で、青いハサミを持ち、第二鉗脚は体長の2倍ほどになる。他のオスに対し、攻撃的で縄張りをもち、交尾の前にメスを囲う習性がある。また、メスが脱皮したとき、メスを捕食者から保護することが知られる。漢の中の漢。(A.Barki; I.Karplus & M.Goren, 1991, "Morphotype related dominance hierarhies in males of Macrobrachium rosenbergii")。

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左からSM, OC, BC 食用として流通するのはBCが多い印象

 

モルフォタイプについては支配と階層の関係性がある。

BCはOC、SMを支配し、OCはSMを支配するという構造になっている。BCは最も受精率が高く、最も社会的ステータスの高いオスタイプである(オス1匹に対し、メス5匹をキープ可能。力と名声があるやつがモテるのはエビも一緒らしい。チキショー)

一方、OCは生殖の代わりに体の成長にエネルギーを集中させる、いわゆる中間体のオスタイプ。BCが存在するとSM→OC / OC→BCの移行が阻害されるらしい。この阻害を回避するためにSMは他のオスタイプから隔離した方が良いとされる。

なお、OC→BCの移行はOCがBCより大きくなった時に発生する。養殖下で観察される割合は 5 SM:4 OC:1 BC である。

 

 

⬇︎生態、モルフォタイプについては下記URLに詳しいacquamarao.com.br

 

 

 

 

 

 

繁殖について

オニテナガエビは高い生殖能力をもつ。メスは体長10cmで成熟し、成体のメスは80,000~100,000個の卵を抱卵する。オスがメスのインキュベーションチャンバーに精子を送り込み、受精する。その後、腹腔内に卵をとどめ、腹足によって保護、通気される。卵はオレンジ色で、孵化2~3日前になると濃い灰色になる。ゾエア幼生は汽水を必要とし、塩分、pH、給餌に細心の注意を払う必要がある。11の成長段階をへて、幼体となり、上流へ遡上を開始する。25~35日で7~10mmに成長する。

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オニテナガエビのアベック 仲睦まじい